REVIEWS丨2025.11.28
この映画の“ヒミツ”は、ぜひ映画館で… 恐怖の正体、意味が分かってからは別の視点で体験することになる『WEAPONS/ウェポンズ』

© 2025 Warner Bros. Entertainment. All Rights Reserved
今年8月、全米で熱狂的に大ヒットしたホラー映画が存在した。『WEAPONS』というタイトルで直訳すると「武器」の複数形なのだが、映画タイトルとストーリーが全く繋がらない。口コミが口コミを呼ぶも「何が武器なのか?」「何が怖いのか?」「何がそんなに面白いのか?」謎のベールに包まれたまま、今年最高に楽しみにしていたホラー映画だ。
ストーリーはこうだ。夜中の2時17分、ある小学校の1クラスの生徒全員が一斉に失踪する。防犯カメラに映っていたのは、全員が何かに操られたように同じポーズのまま走り、闇に消えていく子どもたちの姿。警察はもちろん、街の大人たちは総出で捜索に当たるのだが、行方はまったく掴めない。まるで神隠しにあったような異常事態に親たちは憤り、絶望し、校長や担任には非難の目が向けられる。果たして、子どもたちが失踪した“ヒミツ”とは何なのか──。
この映画の醍醐味は、“得体の知れない恐怖”が少しずつ形を現していく構造にある。その正体は、クラスの担任、子どもの父親、校長、警察官、ジャンキー、そして物語の鍵を握る最後の人物──それぞれの視点を通して丁寧に紐解かれていく。ストーリーテリングは巧妙で、2時間8分というホラー映画としてはしっかりとした上映時間にもかかわらず、まったくダレる瞬間がない。とりわけ、ジョシュ・ブローリン演じる父親が建設現場の測量技術を用いて独自の捜査を進めるシークエンスは強烈にワクワクさせられた。
恐怖の正体、『WEAPONS』の意味がわかってからは別の視点でこの映画を体験することになるのだが、ここからの奥行きは伏せておこう。

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クレッガー監督といえば2022年の『バーバリアン』で一躍脚光を浴びた若き才能だ。民泊にWブッキングされてしまった男女が仕方なく一晩を過ごすことになり、最初はこの男(ビル・スカルスガルド)が怪しさプンプンで登場するものの、男の姿が消え、地下室の存在が明らかになってから新たなレイヤーの物語が始まる。先の読めない脚本で後半はとんでもないドライブ感を味わわせてくれるホラー映画だ。“何がバーバリアン=野蛮人なのか?”という衝撃的な着地点も含め、レイヤー構造のうまさは『WEAPONS/ウェポンズ』にも確実に受け継がれている。
監督は自身の親友を亡くした喪失体験が、この物語の構想のきっかけになったと語っている。突飛な設定の裏側に“人間の生と死”、“親子の愛”がじんわりと流れ込んでくるのは、その個人的な背景が影響しているのだろう。
『WEAPONS』=武器というすごいタイトルと設定を思いつき、ホラー映画と融合させた本作。容赦のない恐怖描写と、スリリングな謎解き、応援したくなる展開、そしてすべてをひっくり返す爽快なラストと、思いがけず胸を打つエンディング――。多くの感情を一気に引きずり出してくれる、極めて秀逸なホラー映画だ。
この映画の“ヒミツ”は、ぜひ映画館で確かめてみて。
文・ホラー映画取締役
『WEAPONS/ウェポンズ』は11月28日(金)より全国公開









