CULTURE2025.05.12

なぜボルシアMGは日本でアカデミーを開講するのか? 板倉滉・福田師王らが高めた日本人選手としての価値

ボルシア

Freundschaftsspiel 2023/2024: Borussia Mönchengladbach – VfB Stuttgart am 29.07.2023 im ATS Sportpark Heimstetten.

ブンデスリーガを5度制覇しているドイツの古豪ボルシア・メンヒェングラートバッハ(ボルシアMG)。現在は日本代表DF板倉滉やFW福田師王が在籍しており、日本のファンの関心も強まっている。そんなフォールズ(ボルシアMGの愛称)が、日本でアカデミーを開講する。彼らはどんな狙いがあって日本市場に参戦するのか。キーマンたちに話を聞いた。

ドイツでは、板倉や福田に加え、強豪バイエルンでプレーする日本代表DF伊藤洋輝、フライブルクで活躍する日本代表MF堂安律、今季から海をわたったマインツの佐野海舟など12人の日本人選手がプレーしている。過去にも長谷部誠氏、香川真司、浅野拓磨、原口元気など多くの選手がドイツの地でプレーした。

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Mannschaftsfoto Saison 2024/2025 am 28.10.2024 im Borussia-Park. Shio Fukuda & Ko Itakura

「日本人はブンデスリーガに適していると思う」と話すのはコーチを務めるヴォルフガング・ハイルマン氏だ。「国民性など共通点が多い。体格的な問題でドイツ人に比べると小ささが目立つが、それをカバーする適応力がある。その上、スキルが高い」と分析。続けて「2人の日本人をはじめ、ポテンシャルは高い。今プレーしている日本の選手たちは、各クラブで大事な役割を担っている」と高く評価した。

日本とドイツの関係といえば、2022 FIFAワールドカップ カタールの戦いを記憶している人も多いだろう。日本代表は、グループステージ第1戦でドイツ代表と対戦し、2ー1の逆転勝利を飾った。大国ドイツに初勝利を挙げた一戦は「歴史的大金星」として号外が出るほど、日本国内で盛り上がりを見せた。

ハイルマン氏は「日本人選手はドイツに勝つだけの力はある」という。さらに「日本サッカー界はこの20年間で素晴らしい発展を遂げている。トップレベルに限らず、草の根の子供たちの成長も素晴らしい」と日本サッカー界の成長と発展がこの結果に繋がったと考えているようだ。

一方、インターナショナル・ビジネス・マネージャーを務めるフロリアン・グリリッチュ氏は日本人選手の商業的な価値について語る。

「日本は、我々の国際戦略において、中国やアメリカと並んでキーターゲットとなっている。スポーツの分野、特にサッカー界は、日本人選手が高額な移籍金を受けて、ヨーロッパのクラブへ移籍している状況を見てもわかる通り、近年、勢いをもって発展を遂げている」

そういった日本人選手への興味・関心と、ボルシアMGが掲げる3つの経営戦略がマッチしたことが今回のアカデミー開講へと繋がった。

ボルシアMGが掲げる3つの経営戦略とは

①Commercial growth(商業的成長)

②Global branding awareness(世界的価値の向上)

③Global football development through our Borussia MG academy(ボルシアMGアカデミーを通してサッカー界の発展を目指す)

「1つ目の柱は、我々は企業なのでお金を稼がないといけない。2つ目の柱はグローバルでのブランディング。そして3つ目の柱は、世界的なサッカー界の発展を望んでいる。我々のアカデミーを通じてサッカーの水準を上げていきたい。この3つを守ることが日本での成功のカギを握る」

Freundschaftsspiel 2023/2024: Borussia Mönchengladbach – Go Ahead Eagles Deventer am 06.01.2024 auf dem FohlenPlatz im Borussia-Park.

アカデミー開講に先立って、ボルシアMGは今年2月に愛知県名古屋市と静岡県伊東市で子供たちを対象にしたトレーニングキャンプを行っている。特に伊東で開催された「BORUSSIA CAMP with REALE」では、日本の認定NPO法人REALE WORLDとタッグを組み、3名の現役コーチたちが49名の小中学生を指導した。

グリリッチュ氏は「この活動の成功が、大きな期待と可能性をもたらせた」という。「我々は世界的なフットボールの発展に寄与したい。その想いと、社会貢献活動に取り組むレアーレが行ってきたこれまでの取り組みがマッチした。国際的にフットボールを発展させるためにも、一緒になって子供たちにより高いサッカーの教育をしていきたい」とコメント。アカデミー事業でも協働するREALE WORLDとの展望を語った。

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キャンプで指導にあたったハイルマン氏は「子供たちが楽しい時間を過ごせたと自信を持っている。他のクラブのキャンプはライセンスを売るような商業的な意味合いが強い。しかし、我々はそのようなキャンプはしない。教育に対する熱意を持っているからこそ、実際のコーチを派遣している」と自分たちの強みである指導力に自信を見せる。

実際に行われたキャンプでは「サッカーを楽しもう!」というコーチの言葉からスタート。子供たちが失敗を恐れずにトライできるような環境や声かけが目立った。現場で熱心に指導していたハイルマン氏は、これから展開される日本でのアカデミーについてこう締め括った。

「まず、成功にはそれぞれの形があることを知ってもらいたい。プロ選手になる、ならないはその子が選ぶ道。どちらを選んでも責める事はない。我々はアカデミーを通じて、子供たちの人間性を育てている。いつもポジティブでモチベーション持っていることが一番大事なんだ」

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