MOVIE丨2026.01.05
空手師範で移民を助ける“謎のセンセイ” ベニチオ・デル・トロの怪演が思わぬ結末へと導いていた『ワン・バトル・アフター・アナザー』

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<2025年一番話題になった作品>との呼び声も高いポール・トーマス・アンダーソン監督作『ワン・バトル・アフター・アナザー』。アカデミー賞常連の名匠が、時代性を反映させながらもエンターテインメントに振り切った快作で、年輪を重ねた主演レオナルド・ディカプリオのユーモラスな演技、そして各所で絶賛されたベテラン俳優ショーン・ペンの怪演、そして息もつかせない後半の展開に興奮した観客も多かったことだろう。そんな絶賛で迎えられた本作だが、強力な登場人物たちの中でも特に印象を残したのがベニチオ・デル・トロ演じる“センセイ”だ。
マーティン・スコセッシ監督との対談形式で行われた「TIME」誌の公開インタビューで、ディカプリオは「この作品におけるデルトロの存在は非常に大きかった。彼が別の作品の撮影中だったため2ヶ月も撮影を待たなくてはならなかったけど、合流する頃には彼の中で“センセイ”がどんな人物で、どういった倫理観の持ち主で、何を是として何を許さないかなど、明確なビジョンが出来上がっていたんだ」と話している。「普通、自分の演じるキャラクターをすぐに理解して役に入り込めるってことは稀」と前置きしながら、「デルトロはセットに合流した時からすでに“センセイ”だった。そのおかげで私も、自分のキャラクター”ボブ”にすぐに入れた。ただ彼の、海が起こす波のような演技に臨んでゆけばよかった」とデルトロの役作りを絶賛している。
さらには、「彼のキャラクターは街の空手道場で師範を務めながら、移民を秘密裏に助けているというもの。デルトロはこの“センセイ”の持つ倫理感がどういうものか?を厳密に考えてきました。なのでこの主人公”ボブ”に対しても、どこまで協力してどこまでは付き合わないかなどを自分で突き詰めていったのです」と説明。デルトロは、この“センセイ”というキャラは人道支援の人だから人殺しは容認しないだろうと考えて進言したことで、当初は脚本にあったボブが敵対するうちの1人を殺してしまうという展開は修正され、デルトロの役作り事態が映画の顛末まで左右してしまったのだという。
デルトロの役作りの凄みがもたらした影響であり、一方今や巨匠と呼ばれるアンダーソン監督の、柔軟な映画づくりの姿勢ゆえに加えられた変更であることについても賛辞と共に触れている。もしボブが人殺しをしてしまったら、あの鑑賞後のなんともいえない爽快感もなかったのかもしれない。俳優が映画作品にもたらしうる影響の大きさを物語るエピソードだ。ちなみに、映画終盤での警官とのコミカルなやり取りは、ディカプリオ曰く「完全にデルトロのアドリブ」なのだそうだ。

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