MOVIE丨2026.01.24
傑作『ワン・バトル・アフター・アナザー』はどのようにして出来上がったか? 鍵は「賞金稼ぎ」「娘ウィラ」

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1月22日(現地時間)に発表された第98回アカデミー賞で12部門13ノミネートを獲得した『ワン・バトル・アフター・アナザー』。トマス・ピンチョンの小説を下敷きに、名匠ポール・トーマス・アンダーソン監督が作り上げた、新たなアメリカン・シネマの傑作だ。その軽妙さと面白さは、ウィットと重厚さを併せ持つキャラクターの貢献によるところも大きい。
中でも後半に登場する、一見悪役だが悪党たちを皆殺しにする“正義の賞金稼ぎ”アヴァンティQが印象的だ。実はアンダーソンの2015年作『インヒアレント・ヴァイス』に登場するキャラクターがベースになっているらしい。これもピンチョンの小説が原作になっており、どちらもアンダーソンがかなり自由に解釈して作り上げたキャラクターなのだという。SAG(全米映画俳優組合)主催のスクリーニング(上映会)後のアフタートークで、監督自ら明かした。
「『インヒアレント・ヴァイス』の原作でピンチョンによる小説『ヴァインランド』は大変好きな作品でした。なので『インヒアレント・ヴァイス』に出てくる、悪者を懲らしめる賞金稼ぎのキャラクターを中心にあれこれと話を考えていたのですが、映画にするためにちょっと方向性を変える必要があるように思ったのです」
そうして『ワン・バトル・アフター・アナザー』の下敷きとなる話を着想し、原作に敬意を払いつつも「必要な部分だけはそのままに、他の話を組み合わせたりしながら発展させていった」と説明している。革命テロ組織の面々が散り散りになり、かつての英雄ボブが冴えない中年オヤジになっていたら、といった設定はアンダーソンが徐々に加えていったものなのだそう。ネイティヴ・アメリカンの血を引く俳優、エリック・シュウェイグが演じる賞金稼ぎアヴァンティQも、このように脚本を発展させていく中でうまく物語にはまったのだろう。
そうして数年、しばらく脚本を練る間にヒロインのウィラ役を探していたのだと言う。主人公とも言える重要な役なため、妥協できなかったのだろう。ピッタリの役者が現れるまで待っていたのだそうだが、その間に制作されたのが『リコリス・ピザ』だったらしい。そしてついにチェイス・インフィニティが“発見”されたことで制作が再開された、という運びだったようだ。つまりチェイスこそ製作陣が待ち望んでいた最後のピースだったわけである。
こうして完成を見た『ワン・バトル・アフター・アナザー』。先日もゴールデングローブ賞で9部門ノミネートされ4部門を見事受賞。1月22日(現地時間)に発表された第98回アカデミー賞で12部門13ノミネートを獲得したが、これは本作が今日のアメリカにおいていかに重要な作品だったかを物語る結果だ。これをきっかけに、今度は賞金稼ぎのアヴァンティQを主人公にした映画が実現するかもしれない。









