REVIEWS2025.11.12

骨が砕け、肉が潰れ、血しぶきが飛ぶ! 列車は血と悲鳴に満ちた“移動式の戦場”と化す… インド映画の暴力描写の常識をぶち壊す『KILL 超覚醒』

KILL 超覚醒

© 2024 BY DHARMA PRODUCTIONS PVT. LTD. & SIKHYA ENTERTAINMENT PVT. LTD.

映画『KILL 超覚醒』は、インド映画の暴力描写の常識を完全にぶち壊す作品だ。余計な理屈をそぎ落とした痛快なバイオレンスアクション映画に仕上がっている。冷酷な殺人マシーンと化した特殊部隊員と列車を襲う40人以上の強盗団の死闘が描かれる…と、ここまでだとありきたりなプロットだが、これまでのインド映画では見たことのないレベルの暴力と死闘がここにはある。

喉を裂き、頭を砕き、血にまみれた男たちが倒れては立ち上がり、また殺し合う。骨の砕ける音、肉の潰れる音、血しぶきの音など、聴覚的にも容赦がない。しかも全編が動く列車の中で撮影されているため、戦闘シーンの精度は驚異的だ。列車は血と悲鳴に満ちた“移動式の戦場”と化していく。

驚かされるのは、狭い列車内という設定にも関わらず、次々と新しい“殺しのアイデア”が出てくることだ。ナイフ、斧、ハンマー、消化器―どんな道具も即座に殺人兵器に変わる。特に印象深いのは消化器だ。人の頭を叩き潰してミンチにしたり、口の中に突っ込んで噴射するなど残酷な使われ方をする。また、列車の一車両がまるごと血まみれの死体で埋まり、天井からぶら下がる男たちの姿はまるでホラー映画のようだ。

KILL 超覚醒

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暴力の連続の中にも“感情”があるのも印象的。主人公アムリットが大切な存在を失う場面では、言葉にならない悲しみが爆発的な怒りへと変わる。また、悪党たちも仲間の死に涙を流す場面があり、単なる敵ではなく“家族”として描かれている点も深い。
『KILL 超覚醒』は“残酷”と“爽快”が紙一重のバランスで成り立つアクション映画だ。約2時間、息をのむようなスリルと緊張感が続く。思わず目を覆いたくなる場面が何度もあるが、映像の完成度は圧巻だ。
ちなみに「ジョン・ウィック」の制作陣によってすでにハリウッドリメイクも決定している。『KILL 超覚醒』はインド映画の暴力描写を、新しい段階へと引き上げた作品と言えるだろう。

KILL 超覚醒

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