CULTURE2026.03.14

「ヒップホップには新しいリーダーが必要」 8名のアーティストが選出… Spotifyの宣言が議論を巻き起こす

Spotifyが、2015年に開始したヒップホップ専門プレイリスト『RapCaviar』。100万人単位のフォロワーを擁し、ストリーミング時代において最も影響力のあるヒップホップ“メディア”の1つといっても過言ではない。

その『RapCaviar』が先日、「ヒップホップには新しいリーダーが必要だ」として新進ヒップホップ・アーティスト達をプッシュしていくことを宣言した。対象となるのはGloRilla、Doechii、Central Cee、BigXthaPlug、Baby Keem、Sexxy Red、Rod Wave、Lil Teccaの8名。すでにそれぞれがニューヨーク、メンフィス、ロンドン、さらにはサンクトペテルブルグなど大都市の巨大掲示板で大々的に広告展開された。


どんなシーンでも、それぞれの時代にそれぞれのスターやリーダー的存在がおり、シーン全体を牽引していくものである。2010年代のヒップホップ・シーンだけでも、ケンドリック、J.コール、ニッキー・ミナージュ、ドレイクらの超ビッグネームが活躍し、今日に至るカルチャーを築き上げてきた。そういったリーダーの存在がシーンを活発にさせるのだとして、<Spotify>は次代のスターを生み出すべく今回のキャンペーンを打つことにしたのだと説明している。

だが、これに対し一般からのリアクションはというと、音楽シーンにとって確かに意義のある方針であると称賛もある一方で、そもそもSpotifyなどプラットフォームがスター不在のシーンを作ったのでは、という批判も上がっている。ストリーミング・サービスが推進する、プレイリスト中心の音楽のあり方では、話題性を作ったり、それぞれの動向が注目されることも難しい。それでは過去のようなスターなど生まれようがないと懐疑的・批判的だったりする意見も多く上がっているのだ。そもそも、お前らがシーンを細分化しすぎてしまったからスターが登場しないんだろうが、ということである。

ヒップホップのようなジャンルは、元手が少なくても表現できることが強みの音楽で、そのため各地域にさまざまなアーティストが点在していた。そこから超ビッグスターが誕生する、という成り上がり的ドリームがこれまであったのも事実である。だが、ストリーミングはむしろ、様々なアーティストが独立して音楽をリリースできたり、ランダムになんでも聴ける世界を形成した。多様で非中央集権的になったことで、音楽に自由がもたらされた一方で、一度に多くの人が一つのアーティストを聴く、という盛り上がり方が起こらなくなった、とも言えるだろう。これが音楽業界に何をもたらしたかは意見も様々だが、一部の多くのコアなリスナーからすると、今回のSpotifyの試みは、かなり自己矛盾を孕んでいるように映るようである。

果たしてこの8名の中の誰かが、圧倒的スターとしてシーンを牽引していくことになるのか。もう少し長い目で見なければ結果はわからないし、もしかしたら他のジャンルでも有効なキャンペーンかもしれない。果たしてこのキャンペーン、未来にどんな実りをもたらすか、あるいは全くの無駄に終わるか、今後注目していく価値はありそうだ。