MOVIE丨2026.04.12
映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』脚本になかった“偶然の名シーン” 強い余韻を残す「Sign of the Times」歌唱シーンの裏側
映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』で、ひときわ強い余韻を残しているのが、エヴァ・ストラット(ザンドラ・ヒュラー)が歌う「Sign of the Times」のシーンだ。この場面は、もともと脚本には存在していなかった。撮影の合間、ヒュラーの歌声を偶然耳にした主演のライアン・ゴズリングが「劇中で歌ってほしい」と強く提案したことで実現したもの。いわば現場から生まれた“偶然の名シーン”だ。
劇中でストラットは、人類の命運を背負うリーダーとして極限の決断を迫られる存在。その彼女が静かに歌い上げるのが、ハリー・スタイルズの「Sign of the Times」。2017年に発表されたソロデビュー曲であり、“混乱の時代でも希望を手放さない”というテーマを持つバラードだ。“Just stop your crying, it’s a sign of the times”という一節は、太陽の異常という未曾有の危機に直面した世界観と強く共鳴する。涙を止めろ、これは時代の兆しだ――その言葉は、地球に残された人々の覚悟、そして避けられない現実を受け入れる意志を象徴するものとして響く。
感情を爆発させるわけでもなく、抑制されたトーンで紡がれる歌声が、かえってシーンの緊張感を高めていく。ストラットというキャラクターの冷静さと責任の重さ、その内側にある葛藤を、セリフではなく“歌”で伝える演出が際立つ瞬間だ。このシーンの影響もあり、「Sign of the Times」のストリーミング再生数は映画公開後に急増。作品の感動とリンクする形で、楽曲そのものも再評価の波に乗っている。
なお、本作のオリジナル・サウンドトラックには同曲は収録されていないが、60~70年代のカントリーやポップスを中心とした選曲が物語全体の感情を支えているほか、ダニエル・ペンバートンによるスコア版もリリースされている。









