REVIEWS丨2025.03.04
「ダークナイト」ジョーカーの衝撃を超える… DCドラマ『THE PENGUIN-ザ・ペンギン-』の“最も残忍なシーン”
バットマンは作品によってダークにもライトにも描かれる。1966年の「バットマン」や「バットマン フォーエヴァー」、「バットマン&ロビン」は、コメディ色が強い作風だが、クリストファー・ノーランの「ダークナイト」3部作やマット・リーヴスの「THE BATMAN-ザ・バットマン-」は、より現実的な世界観を持ち、シリアスな物語と過激なシーンが多くなる。
「ダークナイト」では、ヒース・レジャー演じるジョーカーが銀行の支店長を爆破し、レイチェル・ドーズを爆殺、ハービー・デントを炎で焼くなど、数々の悪行を重ねた。特に印象的なのは「消える鉛筆のマジック」で、マフィアの部下の頭を鉛筆に叩きつけて殺す衝撃的なシーンだ。
過去のバットマン映画にも暴力的な場面は多い。ティム・バートン版「バットマン」ではマイケル・キートン演じるバットマンが敵を爆破し、「バットマン リターンズ」ではダニー・デヴィートのペンギンが血を流しながら苦しみ続ける死を迎えた。しかし、ヒース・レジャーのジョーカーほど残酷で冷酷な悪役はこれまでいなかった。
だが、『ペンギン』最終回で描かれたヴィクター・アギラールの殺害シーンは、それすらも超える衝撃を与えた。オズはヴィクターが油断している隙をつき、彼を窒息死させる。しかも、それはヴィクターがオズに忠誠を誓い、心を許した瞬間だった。オズは彼に感謝の言葉を伝え、優しく抱きしめた直後に首を締めて殺す。この冷酷さと、ヴィクターが更生できる可能性を持っていたことが、このシーンをより残酷なものにしている。
『THE PENGUIN-ザ・ペンギン-』は最初から最後まで極めてダークだ。オズがアルベルト・ファルコーネを衝動的に射殺したことが連鎖反応を引き起こし、多くの裏切りと死を招く。オズはサル・マローニの妻子を焼き殺し、その様子を彼に語る。ソフィア・ファルコーネも家族を皆殺しにし、ジョニー・ヴィティを一族の前で射殺する。過去の暴力が新たな暴力を生むというテーマは『ペンギン』全体を貫いている。ソフィアがアーカムで虐待を受けた後にマグパイを殴り殺す場面や、オズが母の関心を独占するために兄弟を殺した過去が明かされるシーンなど、全てが悲劇の連鎖の中で描かれる。さらに、オズがイブ・カルロに母の服装をさせるという異常な関係性まで描かれ、物語の狂気が際立っている。
「ダークナイト」のジョーカーは確かに衝撃的だったが、『ペンギン』最終回のヴィクター殺害シーンは、それ以上に恐ろしく、心に残るものだった。