MOVIE丨2025.02.10
『スーパーマン』vs『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』 2025年7月、アメコミ界のパイオニアが出そろう奇跡
アメコミ映画やホラー映画などジャンル映画の情報を発信している杉山すぴ豊です。今日は今年の7月に公開の2つのアメコミ・ヒーロー映画について解説します。
今年も沢山のアメコミ原作のヒーロー映画が公開されますが、筆者が注目しているのが7月14日全米公開の『スーパーマン』、そして7月25日公開の『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』です。前者はバットマンやジョーカーのDCコミックスが原作。そしてジェームズ・ガン監督が新たに仕掛けるDC映画世界=DCユニバース/DCUの第1作劇場用映画となります。そして後者はマーベル・シネマティック・ユニバース/MCUの最新作です。作品自体への期待も大きいのですが、この2作が今年の7月ほぼ同時に公開されるということが大変興味深いかつ感慨深いのです。
それはなぜか? DCコミックスにとってスーパーマンは最初のスーパーヒーローであり、スーパーマンの成功があったからこそDCコミックスの歴史は始まったといえます。一方、ファンタスティック4=ファンタスティック・フォーはマーベル快進撃のきっかけを作った作品であり、要はマーベルのスーパーヒーロー物はこの作品からスタートとしたといっても過言ではないのです。つまりDCとマーベルの事実上の第一号ヒーローたちの映画が、同じ年の同じ月に封切られるわけです。
コミックスの歴史において、スーパーマンは画期的な発明でした。というのも、探偵やターザン、マスクを被った自警団員みたいなヒーロー物はあったけれど、これだけの力=つまりスーパーパワーを持ったヒーローというのはほぼ初めてだったわけです。スーパーマンの設定は次のようなものでした。崩壊する惑星クリプトンから地球へと脱出した赤ん坊が成長しスーパーマンになります。。彼のパワーはクリプトン星と地球との環境の違い(特に太陽光線の違い)が作用し彼の肉体にスーパーパワーが宿ったのです。これが大うけ。そしてスーパーマンの後に続けと様々なスーパーヒーローが生まれます。つまりその後のコミ ックス界を席巻するスーパーヒーロー物というのはスーパーマンから始まりました。
そういう意味でスーパーマンはすべてのスーパーヒーローの父、元祖ということです。1938年のことでした。そしてその後のスーパーヒーローというのはスーパーマンを軸に生み出されていくわけです。スーパーマンが宇宙人で明るい太陽が似合うなら、それとは真逆で普通の人間で夜の街が似合うバットマン。スーパーマンがパワーの持ち主なら、スピードで勝負できるフラッシュ。スーパーマンが空なら、海の男アクアマン。スーパーマンが男だから女のヒーロー、ワンダーウーマンというように、です。
一方、DCの背中を追い続けてきたマーベルは、1961年にファンタスティック・フォーを発表。これもコミックの歴史に残る発明となりました。4人の男女が宇宙線を浴びスーパーパワーを手に入れる。彼らはその力を世界の平和に役立てようとファンタスティック・フォー(素晴らしき4人組)というチームを結成します。ここだけ説明するとよくあるヒーロー物っぽいのですが、ファンタスティック・フォーが人気を博した理由は、従来のスーパーヒーローの物語に人間味=人間ドラマの要素を取り入れたことです。この4人は家族であり、しょちゅう内輪もめをしています。夫婦ゲンカをするヒーローなんて前代未聞でした。
マーベルはスーパーヒーロー物をたまたますごい力を手にしてしまった普通の人間の物語、完璧ではなくどこかポンコツの共感できる人物が超人になる、という風に描いたのです。これが読者の心をつかんだ。その最たるものがヒーロー物のフォーマットを借りた青春ドラマ、スパイダーマンでしょう。以来スーパーヒーロー物を人間ドラマとして描くという流れが生まれます。これはDCにも影響を与えます。
DCがスーパーマンでスーパーヒーローというジャンルを作り出し、マーベルがファンタスティック・フォーでスーパーヒーロー物の可能性をさらに広げたわけですね。この2作がなかったら今日のアメコミ・ヒーロー文化は違ったものになっていた、いやそもそもアメコミ・ヒーロー物というのは存在していないかもしれません。今回映画『スーパーマン』は新たなるDC映画世界のキックオフであり、そして『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』はこれからのMCUを担う重要なターニングポイントとなる作品です。
2025年7月に、アメコミ界のパイオニアが出そろうというのは本当に奇跡だと思いますね。
文・杉山すぴ豊