REVIEWS2025.03.07

悪いヤツは殺す! 法で裁けぬ上級国民は“処刑”を… 地獄から来た女教師の復讐・オブ・復讐劇 韓国産リベンジスリラー『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』

ザ・グローリー ~輝かしき復讐~

Netflix © 2022

Netflixドラマ『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』は、かつて凄まじいいじめを受けた女性が、時を経て“静かな復讐者”となり、加害グループに制裁を下していく処刑スタイルの復讐ドラマだ。

高校時代、下劣極まりないいじめを受け、自殺寸前で思いとどまった(というか死にきれなかった)貧しい母子家庭の出身の女性が、その後、自分の夢や希望を打ち砕いた上級国民の元同級生たちへの復讐を実行していくこのドラマ、その序盤で、建築家になることを夢見ていた主人公の少女・ドンウン(演ソン・ヘギョ)は、いじめをキッカケに家からも学校からも放り出され、すべてを失うという憂き目に遭ってしまう。学歴社会の韓国において、高校でドロップアウトすればもうジ・エンド。建築家への道はおろか、人生そのものが“ほぼ詰んだ”状態となってしまうのだが、それでも彼女はくじけなかった。

なぜなら、自分をこんな状況へと追い込んだいじめグループへの復讐を心に誓ったからだ。彼女は想像を絶する“地獄からの這い上がりのための地獄”ともいうべき苦難に満ちた日々の中で、懸命に働き、そして、寝る間を惜しんで四六時中勉強し続けると、文字通りの“苦学”の末にようやく高卒資格を手に入れたことを足がかりに、やがては教員資格まで取得。これを1つの武器として、復讐をスタートさせていくのである。

その後、20年近くの時が流れ、晴れて復讐バトルのスタートラインに立つことができた彼女は、表向き、教員として働きながら、様々なテクニック&トラップをいじめグループへと仕掛け、彼らを1人ずつ“処罰”していくこととなる。ターゲットたちは、復讐者である彼女の存在を認識していながらも、抗うことさえできずに翻弄され続け、「なぜそうなっているのか?」がわからぬまま、ある者は命を(間接的にではあるが)奪われ、またある者は“社会的な意味での死”を与えられていく。ドンウンは、ヤクザや傭兵ではなく、“普通の教師”であるがゆえに、基本的には刃物も爆発物も銃も毒も使わない。しかし標的に対して確実に“死”をもたらしていくのだ。かつて、涼しい顔で彼女を加害していた面々が、時を経て、今度は涼しい顔をした彼女から逆に追い詰められ、半狂乱の中で“死”を迎えていく…因果応報といってしまえばそれまでだが、彼らの末路は敵ながらあまりに哀れだ。しかし多くの人々は、ドンウンに対しては、その骸が増えるたびに、「よかったね、おつかれさま」と言ってあげたくなることだろう。

ザ・グローリー ~輝かしき復讐~

Netflix © 2022

それがも“いじめの復讐”である以上、描かれる場面の多くはなんとも殺伐とした光景。しかし観る者にとっては、そうした景色を越えた先に生まれる、ある種の“優しい気持ち”が、“復讐が成功する爽快感”とは別に、独特な心地よさを与えるように思う。多様性の尊重だのなんだのという割には、加害者から“目をつけられただけ”の何の罪もない少年少女たちが、いじめを苦に自殺するという話が毎日のようにニュースになるという、地獄のような世の中であるからこそ、我々はこうした作品を求めているのかもしれない。

 

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