MOVIE丨2025.08.24
「サンローラン」のディレクターが手掛ける豪華絢爛な衣装に注目『パルテノペ ナポリの宝石』

©2024 The Apartment Srl – Numero 10 Srl – Pathé Films – Piperfilm Srl
イタリアの巨匠パオロ・ソレンティーノ監督最新作で、イタリア国内で監督史上最大のヒットを記録した『パルテノペ ナポリの宝石』が、8月22日(金)より劇場公開中。この度、サンローランのクリエイティブが光る冒頭シーンとファッションに着目した見どころをご紹介。
「第86回アカデミー賞」外国語映画賞を受賞した『グレート・ビューティー/追憶のローマ』(13)をはじめ、『グランドフィナーレ』(15)、『The Hand of God -神の手が触れた日-』(21)など、圧倒的な映像美で<21世紀の映像の魔術師>と呼ばれ、人生の悲哀と幸福を表現し、映画ファンを虜にしてきたイタリアの巨匠パオロ・ソレンティーノ監督。時は1950年、人魚伝説が根付く南イタリア・ナポリに生を受け、街を意味する“パルテノペ”と名付けられた美しいひとりの女性の生涯を描く。ソレンティーノ監督が初めて女性を主人公に据えた本作は、「第77回カンヌ国際映画祭」のコンペティション部門に正式出品され、大きな話題に。その後公開を迎えたイタリア国内では、なんと監督作史上最大のヒットを記録。監督の新境地かつ真骨頂といえる渾身の傑作が誕生した。

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街の象徴である人魚の名を持つ主人公パルテノペを演じたのは、本作で鮮烈な銀幕デビューを飾った新星セレステ・ダッラ・ポルタ。彼女の瑞々しい輝きと、無邪気な笑顔、溢れ出る魅力に誰もが虜になること間違いなし。美しい輝きが多くの人々を魅了し、時には悲劇や争いをも引き起こす宝石のような、神秘的な魅力を放つ女性を全身全霊で演じきった。さらに、パルテノペと運命的な出会いを果たす孤独な作家ジョン・チーヴァーを、ソレンティーノ監督作への出演を熱望していたというゲイリー・オールドマンが演じるなど、豪華俳優陣が脇を固める。
製作は、世界屈指のラグジュアリーブランド「サンローラン」が、異なる分野の先鋭的なアーティストたちとコラボレーションするという、サンローランのクリエイティブ・ディレクター、アンソニー・ヴァカレロの継続的な取り組みを反映して映画界へ参入した「サンローラン プロダクション」が手掛けた。本作では、アンソニー・ヴァカレロ自らが衣装のアートディレクションを担当し、50年代から80年代までの時代の変遷とともに生きる様々な人々を彩る色彩豊かなファッションの数々を作り上げた。さらに、北米配給権を今世界の映画ファンに最も愛される気鋭の配給会社「A24」が獲得。パオロ・ソレンティーノ監督×サンローラン プロダクション×A24。新たなコラボレーションでスクリーンに映し出される贅沢な映画体験は必見だ。

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風光明媚な港町・ナポリが持つ二面性とパルテノペの浮き沈みのある人生に呼応するように、柔らかで華やかなスタイルから荘厳でクラシカルなスタイルに移り変わっていく贅沢な衣装にも目を奪われる本作。
衣装ディレクターを務めたのは、60年以上の歴史を持つ世界的なファッションブランド「Saint Laurent(サンローラン)」のディレクターアンソニー・ヴァカレロ。イタリア人の両親をもつベルギー出身のヴァカレロは、2008年に自身の名を冠したブランド「アンソニー・ヴァカレロ」を立ち上げたのち、2016年よりサンローランのクリエイティブ・ディレクターに就任した。カール・ラガーフェルドやドナテッラ・ヴェルサーチら名だたるデザイナーも、セクシーかつ大胆さを持つ彼のデザインに魅了され、また各ファッション媒体も彼が手掛けるコレクションについて、「サンローランが表現する理想の女性像は、古典的なミューズが持つ魅惑的な完璧さよりも複雑」「シェイプ、サイズ、そして美意識において、そこには無限の可能性が感じられる」と絶賛しデビュー当時から期待を寄せていた。そんなヴァカレロが手掛け、かつてのイヴ・サンローランからインスピレーションを受けた美しい衣装は必見だ。
冒頭シーンは、歴史、文化、商業が交差するナポリのシンボル的存在のショッピング施設ガッレリア・ウンベルトのあるサンカルロ通りを、ナポリの自然を想起させるような緑や青を中心とした同系色の衣服を身に着けた男女が行き交う様子がスローモーションに映し出されている。優雅で活気あふれる映像には、サンローランの洗練された美意識が宿っている。
パルテノペが着用している日々のワードローブに注目してみると、前半の探求心に満ち溢れている若き日のパルテノペは、色とりどりの衣服や水着、軽やかな薄手のドレスを身にまとっている。鮮やかな色彩は広大な海と戯れ太陽を浴び、溢れんばかりの活力と自由への希望を感じる。身体のラインにまとわりつく薄手のドレスは、若き日の軽やかさを示唆する一方で、決して振り払うことのできない過去の記憶に囚われているかのよう。
そして後半、パルテノペが成長し人類学への志を固めていくにつれ、堅実で落ち着いたクラシカルなスーツスタイルへと移り変わっていく。サンローランにとってのスーツスタイルは、創業者イヴ・サン=ローランのパーソナルスタイルでブランドのアイコンとしても長い間愛されてきたスタイルで、さらに男性の衣服であったジャケット×パンツのスーツスタイルをウィメンズとして確立させた。肩がしっかりと張った男性的なシルエットのジャケットを羽織るパルテノペは、成長と自立、そして逸脱の象徴となると同時に窮屈さや脆さも併せ持ち、自由と社会の期待の間で揺れ動く女性としてのジレンマが垣間見える。

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さらにイタリア・ローマにある、世界的に有名な映画スタジオの複合施設チネチッタ・シ・モストラでは、本作の豪華爛漫な映画セットや衣装が展示されている。セレステ・ダッラ・ポルタが着用したドレスやスーツのほか、大女優グレタ・クール役のルイーザ・ラニエリのゴージャスなドレスや、パルテノペがナポリ大聖堂で司教に会った際に着用したサン・ジェンナーロの聖遺物の宝飾品、ジョン・チーヴァー役のゲイリー・オールドマンが着用した白いリネンのスーツなども展示されている。
時間の経過と共に変化していくワードローブは、人生の美しさから時間の無常さまでのコントラストをより鮮やかに彩るだけでなく、二面性をもつナポリの街とパルテノペそのものを反映している。パオロ・ソレンティーノ監督が手掛ける映像美とともに、ヴァカレロが手掛ける華やかな衣装にも注目だ。

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『パルテノペ ナポリの宝石』は全国公開中