REVIEWS丨2025.11.22
大傑作『プレデター:バッドランド』は最高に魅力的な“バディムービー” B級SF・コメディ・アクションの良い所を全部乗せ

©︎2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
『プレデター:バッドランド』は、80年代を代表する悪役で背骨を引き抜くあの醜い化け物が主人公に、そして良い奴になる。この設定だけでも攻めすぎてる。「プレデター」シリーズを引き継いだダン・トラクテンバーグ監督にとって3本目のプレデター作品であり、2022年の革新的な前日譚「プレデター:ザ・プレイ」、アニメアンソロジー「プレデター:最凶頂上決戦」に続くものだ。トラクテンバーグのこれまでのシリーズへの向き合い方を見るかぎり、プレデターを深く愛し、映画が持つ未開拓の可能性について長年考えてきた信頼できる人物なのだろう。『プレデター:バッドランド』で、ついにその理想を実現したのだと思う。
主人公のデク(ディミトリアス・シュスター=コロアマタンギ)は、彼のプレデター一族の“出来損ない”と見なされており、兄のクウェイ(マイク・ホミック)を除けば、他のヤウトゥジャたちから軽視され、嫌われている。巨大で威圧的な彼らの父親は、デクは弱いと考えている。そしてプレデターは弱さを決して許容しない。そんなデクは即座に、銀河で最も危険な惑星ジェンナへ追放させられてしまう。惑星ジェンナは、次々襲いかかってくる謎の危険生物や近づけば人食い植物やカミソリのように鋭い草、毒を噴射する奇妙な生物など外部から来た者を殺す気満々だ。流れ者となったドクは、この危険な惑星であらゆるものを噛み砕くほぼ無敵の怪物“カリスク”を倒し、その首と背骨を父に持ち帰ることで名誉を得て、一族の承認を得ようとする。
カリスクを探す道中で陽気なサイボーグ・ティア(エル・ファニング)と組む羽目になる。彼女はウェイランド・ユタニ社(『エイリアン』シリーズでお馴染みの巨大企業)が派遣した全アンドロイドの探査隊の一員だった。しかも彼女は上半身だけで、下半身はカリスクに持っていかれてしまっている。『エイリアン』作品と同様、企業が生体兵器部門へ持ち帰るため凶暴な生物を捕獲することが目的だった。シアは探査隊の全滅を語り、自分は半分に引き裂かれながらも生き延びたと説明する。また同型の仲間が生存していると信じており、その“信じる心”そのものがすでに人間らしさを示している。ティアは仲間を救い、自分の下半身を回収したいと願い、その代わりにデックのカリスク討伐を手伝うことを申し出る。ここから物語は奇妙で魅力的な“バディムービー”へと転じる。「プレデターとロボがバディ組む」という妄想のような設定だが、これが驚くほど良いコンビに仕上がっていく。無口なプレデターと、うるさいアンドロイド。さらに青い猿のようなエイリアンも仲間に加わり、完全にチームができあがる。デクは、コミカルなサイドキャラクターたちと出会い、しぶしぶながら“共同体”や“家族”という価値を学び始めるのだ。

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コアなプレデターファンは困惑するかもしれないが、トラクテンバーグのキャラクターへの愛は本物だ。主人公2人にカッコいい見せ場を次々用意している。ファニングは上半身と下半身が別々に敵と戦うという、発想勝ちのアクションも披露する。そして何より『プレデター:バッドランド』には“ハート”がある。どこか「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のような、はみ出し者チームが無理ゲーに挑む物語になっている。ビジュアル面もガーディアンズ味があり、異星クリーチャーとのド派手バトルが満載。大量の暴力が詰まっており、かなりグロテスクだ。怪物をプラズマソードで真っ二つにして、その内臓を掲げて勝利を示す場面もある。登場するのがエイリアンとアンドロイドばかりで、人間の赤い血が登場しないだけで緑、紫、乳白色などの血液がこれでもかと飛び散る。
『プレデター:バッドランド』はB級SF・コメディ・アクションの良い所を全部乗せ、観客をワクワクでぶん殴ってくる映画だ。過去作の焼き直しでもなく、概念の核を取り出して新しい形に再構築している。また、印象的なのは、結束にこそ強さがあるという作品のテーマに結びつけられ、人間が一人も登場しないにもかかわらず、「人間であるとは何か」を真摯に掘り下げた作品だという点だ。この世界観の大転換を受け入れられるなら、『プレデター:バッドランド』は初代「プレデター」以来一番“楽しいプレデター”かもしれない。
『プレデター:バッドランド』は大ヒット上映中









