REVIEWS2026.01.08

タブーに切り込む… 倫理的に“微妙な境界線”に立つ人間達が互いの欲望と生存のために騙し合うピカレスク犯罪劇『YADANG/ヤダン』

『YADANG/ヤダン』(1月9日公開)は、麻薬犯罪の裏社会で捜査機関と取引しながら利益を得る“ヤダン”と呼ばれる存在を軸に描くクライムアクション。これまで韓国映画ではほぼ触れられなかった題材に切り込んだ意欲作だ。

YADANG/ヤダン

©︎ 2025 PLUS M ENTERTAINMENT AND HIVE MEDIA CORP, ALL RIGHTS RESERVED.

監督はファン・ビョングク。実際の“ヤダン”ブローカーや麻薬捜査官など多数に取材し、本人が警察に摘発されて尿検査を受けたエピソードもあるという徹底したリサーチを経て、麻薬流通現場やホテルでのパーティー、追跡戦などの描写にリアリティを持たせている。

主人公は、無実の罪で服役していたイ・ガンス(カン・ハヌル)。彼は検事ク・グァンヒ(ユ・ヘジン)から減刑を条件に“ヤダン”として協力することを持ちかけられ、麻薬捜査の闇へと足を踏み入れていく。出世を狙う検事、事件に命を懸ける刑事オ・サンジェ(パク・ヘジュン)、そしてガンスという三者の思惑が交錯し、物語は緊張感を高めていく。
この倫理的に微妙な境界線に立つ人間たちが互いの欲望と生存のために騙し合うピカレスク犯罪劇は、俳優陣の演技が大きな魅力だ。主人公イ・カンス役のカン・ハヌルは軽妙さと厚みのある人物像を説得力をもって演じ、韓国映画界に頼もしい若手存在感を示した。検事ク・グァニ役のユ・ヘジンは野心的で虚栄的なキャラクターを重厚に演じる。ほか若手勢も物語の重要なピースとして活躍し、全体の演技アンサンブルを支えている。

YADANG/ヤダン

©︎ 2025 PLUS M ENTERTAINMENT AND HIVE MEDIA CORP, ALL RIGHTS RESERVED.

YADANG/ヤダン

©︎ 2025 PLUS M ENTERTAINMENT AND HIVE MEDIA CORP, ALL RIGHTS RESERVED.

検察や警察、政治家、麻薬組織が絡み合う一見よくある犯罪映画の構図を取りながら、「捜査の道具として使われ、捨てられた人間」の感情に焦点を当てた。映画が描くのは巨大な社会構造そのものよりも、人を道具として扱う権力側と、そこから捨てられた者たちの怒りと連帯。裏切られた者同士が互いを「目的ある存在」として見つめ直す点に、この作品ならではの感情的な強度があり、物語を動かしていく。

予測可能な展開が多いが、テンポ良く展開、観客を飽きさせないスピード感で心地よく進んでいく。「オーシャンズ11」のような大どんでん返しを効果的に使う構造にも通じる。裏取引、権力、腐敗といったテーマをリアルに描きつつ、義理や裏切り、復讐といった王道要素も盛り込み、娯楽性と社会性を両立。作品は社会派というよりも犯罪エンタメ映画として明確な立ち位置を持っている快作だ。

YADANG/ヤダン

©︎ 2025 PLUS M ENTERTAINMENT AND HIVE MEDIA CORP, ALL RIGHTS RESERVED.

YADANG/ヤダン

©︎ 2025 PLUS M ENTERTAINMENT AND HIVE MEDIA CORP, ALL RIGHTS RESERVED.

YADANG/ヤダン

©︎ 2025 PLUS M ENTERTAINMENT AND HIVE MEDIA CORP, ALL RIGHTS RESERVED.

WHAT TO READ NEXT