REVIEWS2025.03.06

狙った人間は死ぬまで狙う“殺人犬”で突如カオスへ! “新感染×グエムル”単なるディザスタームービーと思ったら裏切られる『プロジェクト・サイレンス』

プロジェクト・サイレンス

© 2024 CJ ENM Co., Ltd., CJ ENM STUDIOS BLAAD STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED

『プロジェクト・サイレンス』は、橋での多重事故が題材の、一見するとオーソドックスなディザスタームービーに見えるが、他とは一線を画している。スピーディーな展開と迫力のある特殊効果で一気に加速してクライマックスまで突っ走る。

物語は無駄なく核心へと進んでいく。登場人物の説明は最小限に抑えられ、彼らはすぐに悲劇の舞台となる橋へと集まる。見知らぬ人々が協力し合うサバイバル劇かと思いきや、そこに予想外の新たな脅威が加わる。軍事訓練を受けた凶暴な犬たちが檻から逃げ出し、生存者たちを襲い始めるのだ。軍の命令を無視し、完全に暴走する殺人犬たちの猛攻は、一気に映画のテンションを引き上げる。人間を襲うシーンはリアルで恐ろしい。殺人犬の恐怖は映画が進むにつれ次第に増していき、その背景を探る展開も見所のひとつだ。犬たちのバックストーリーは、単なるモンスターとしてではなく、悲しみを感じさせる存在として描かれている。この要素は「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.3」のロケット・ラクーンのエピソードを思わせる。

『プロジェクト・サイレンス』の魅力のひとつは、上映時間が100分未満という点。無駄なシーンを削ぎ落とし、息つく暇もない展開が続く。ただ、その分キャラクターの成長はあまり描かれず、主人公であるシングルファーザー(故イ・ソンギュン)が中心となる。彼は大統領候補の秘書として倫理観に欠ける行動をとることもあり、完全に共感できるタイプではないものの、その欠点が逆に興味深い。自己中心的な父親が試される物語になっており、この展開は「新感染」とも重なる。一方、彼の娘(「新感染」のキム・スアン)は、最初は典型的な”守られる存在”として描かれるが、徐々に父親とは異なる強さを見せ始める。さらに、本作を最大限に盛り上げるのがNetflix「トラウマ・コード」の大ヒットで人気爆発中のジュ・ジフン。犬を愛するトラック運転手を演じる彼のユーモアと機転が、極限状況の中でいいアクセントになっている。

プロジェクト・サイレンス

© 2024 CJ ENM Co., Ltd., CJ ENM STUDIOS BLAAD STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED

予測可能な展開もあるが、勢いとダイナミックな演出が弱点を補っている。そして何より、本作が単なるディザスター映画ではなく、突如現れる”殺人犬”という要素を加えたことで、ありふれた作品にならずに済んでいる。この異色の展開こそが、『プロジェクト・サイレンス』を記憶に残る作品にしている。

『プロジェクト・サイレンス』は大ヒット上映中

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