REVIEWS丨2025.04.02
「RRR」の後に『デーヴァラ』を選んだ理由、シヴァ監督が映画に込めたメッセージとは? NTR Jr.インタビュー〈前編〉 (聞き手:ギンティ小林)

© 2024 NTR Arts. All rights reserved.
日本でも規格外のヒットを飛ばした兄弟仁義スペクタクル映画「RRR」の主演スター、タラクことNTR Jr.主演最新作『デーヴァラ』が日本上陸!監督を務めるのはタラク主演作『ジャナタ・ガレージ』(2016)のコラターラ・シヴァ。彼とタラクが8年ぶりにタッグを組んだ本作が挑むのは、豪華絢爛かつミステリアスな海洋スペクタクル・アクション!
タラクが演じるのは、海沿いの僻地で暮らす伝説の海の戦士にして密輸団のリーダー、デーヴァラ。気になる物語の舞台は1984年。海沿いの僻地にある不気味なほどアグレッシブな住人だらけの集落で暮らす伝説の戦士デーヴァラ(NTR Jr.)は、集落を存続するために密輸団のリーダーを務めていた。しかし、自分が運んでいた武器がテロに使われていることを知った彼は密輸業から撤退し、漁業に専念すると村民たちに宣言する。彼のいきなりすぎる路線変更に納得しないライバルのバイラ(サイフ・アリー・カーン)たちはデーヴァラ暗殺を企てる。しかし、デーヴァラはタルクの魅力がスパークした無双すぎる格闘アクションを披露しながら、暗殺者たちを返り討ちにし、「自分は目に見えない恐怖となり、密輸を行う者たちを罰し続ける」というメッセージを残して姿を消す…。
それ以来、人知れず密輸を行った者は何者かに襲われるようになり、集落の人々はデーヴァラの影におびえるようになった。それから12年後、いまだに打倒デーヴァラに燃えるバイラは集落の男たちを殺人マシンに鍛えあげて私設軍隊を作っていた。そしてデーヴァラの息子ヴァラ(こちらもNTR Jr.!)は屈強な青年に成長した。しかし、父親とは違い温厚で気弱な性格であった…。
という1984年と1996年という二つの時代を舞台に描く本作で、タラクは伝説の海の戦士デーヴァラ、そして成長したデーヴァラの息子ヴァラの二役を演じる!つまり、観客にとっては、武骨かつハードコアな魅力満載の戦士と、陽気で温厚な性格の青年という2パターンのタラクの魅力を堪能できるリッチな作りになっている。
ダンス・シーンのゴージャスさは期待して間違いなしだが、アクションでも「RRR」でキャプテン・アメリカ級の無双アクション&ハイパーアクティブかつチャーミングなダンスを披露したタラクが、本作ではアクアマンに勝てるのでは……! と思っちゃうような無敵すぎる海洋格闘アクションを披露! しかも、その大乱戦に凶暴な人喰い鮫まで参戦してくださる過剰なサービス精神もアピール!
そんな本作に主演したタラクさんに、映画の魅力を存分に語ってもらいました! ちなみにタラクさんは、インタビュアーの名前を頭に叩き込んで、取材中は僕のことを「コバヤシサンは」と呼んでくださる画期的なナイスガイであったことも報告しておきます!(聞き手:ギンティ小林)

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恐れを知らなければならない
――『デーヴァラ』(2024)はタラクさんにとって『ジャナタ・ガレージ』(2016)以来のコラターラ・シヴァ監督作品になります。シヴァ監督は「RRR」(2022)を撮影中のタラクさんを訪ね、本作のストーリーを説明して出演交渉したそうですね。出演作30本目を本作に決めた理由を教えてください。
タラク:そうですね、シヴァ監督が私に会いに来たのは「RRR」の撮影が終わりに近づいている頃でした。まず、私は「RRR」のヒットによって、日本をはじめとする国際的な旅路がはじまりました。映画を観てくれた皆様のおかげで特別な経験をさせてもらったと思っています。今回の『デーヴァラ』も日本の方たちに愛してもらって、「RRR」がアカデミー賞(第95回アカデミー賞(R) 歌曲賞)を受賞したような道のりを歩むことを期待しているんですが(笑)。ただ、「RRR」がヒットしたおかげで私の作品に期待してくださる人が増えたので、それに応えなくてはいけないっていうプレッシャーもありました。そして「RRR」の後の主演作に『デーヴァラ』を選んだ理由ですが、シヴァ監督の説明を聞いて、これは彼の得意な分野を活かした作品だな、と思ったんです。
――シヴァ監督の得意な分野とは何ですか?
タラク:シヴァ監督がこの映画に込めたメッセージのことです。ただし、メッセージを前面に押し出すと、映画が説教臭くなってしまって学校で授業を受けているような退屈な気分になってしまいますよね……(笑)。だけど、シヴァ監督はエンターテインメントの中にメッセージを自然に盛り込むことに長けているんです。監督が『デーヴァラ』で伝えたかったメッセージは「恐れを知ること」というか「畏敬の念を抱くこと」。つまり、良い人間として生きるには、ある程度は恐れを持っていることが必要なのでは、ということです。
「RRR」の撮影中に訪ねてきたシヴァ監督から「そのことを映画で伝えたい」と言われたことと、他には本作がインドで忘れ去られようとしている海沿いで暮らす部族の物語であること、海の生き物や戦士がたくさん登場する映画になる、と聞いて「RRR」の後に出演する映画はこれだな! と思い出演を決めました。
実体験を演技に活かす
――今回、タラクさんはデーヴァラと息子ヴァラの二役を演じています。父親のデーヴァラは、シヴァ監督作『ジャナタ・ガレージ』でタラクさんが演じた主人公アーナンドのように戦闘能力が高くて威厳に満ちたリーダーです。一方、息子ヴァラは陽気で人懐っこい性格ですが、父親に比べるとどこか頼りない人物です。父と息子を演じ分けるのは大変だったのでは?
タラク:これは「子に従え」という感じでしたね(笑)。
――どういうことですか?
タラク デーヴァラは父親ですよね。私は私生活でも10歳と6歳の息子たちの父親なので、ある意味、普段父親として息子たちに接しているように演じれば良かった(笑)。そう考えると、私が父親になる前はデーヴァラを演じることはできなかったかもしれません。この役をどう演じれば良いのかは息子たちが教えてくれた、と言っても過言ではありません。この10年の父としての経験というのが何よりも糧となりました。
――実体験を演技に活かしているんですね。
タラク:私が思うに、演技というのは結局、想像力を働かせただけでは上手くできるものではない。自分が経験してきたことがベースになっているんですよね。ですから、私が様々な映画で息子を演じたり、夫を演じたり、少年を演じたりすることができるのは、自分の経験があったからです。これからも良い演技をするために、人生を通して日々の生活の中から様々なことを学び続けなければ、と思っています。
――デーヴァラの息子ヴァラは演じるのはいかがでした?
タラク:ヴァラは、自分の息子たちを参考に演じました。つまり、息子たちは体力などではまだまだ私に及ばない。世の中のことも充分に見えていない。
そして、ヴァラは本来なら道を切り開いて人生を見せてくれる父親の存在が少年時代に不在になってしまった、ということを念頭に置いて演じました。父親のデーヴァラはヴァラに「恐れを知れ」ということを教えて、海へ消えてしまいましたよね。ですから、彼は自分で色々なことを学んで発見していかないといけなかったわけです。で、ちょっとおどおどしたヴァラですけれども……これから映画を観る方たちのために詳しいことは言えませんが、ヴァラは映画の後半では全く違う面を見せてくれますよね(笑)。デーヴァラとヴァラの二役を演じることは、父親としての自分と息子たちを参考にして演じることができたんです。

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――本作はタラクさんの格闘アクションも見せ場ですが、ここでも父親デーヴァラと息子ヴァラの戦い方の違いがあったと思います。デーヴァラは問答無用の強さをアピールするのに対して、ヴァラはトリッキーな戦闘スタイルを披露しますよね。
タラク:デーヴァラはアクションだけでなく、彼が映画の中で最初に踊るダンス「武器祭礼(アーユダ・プージャ)」でも強さを見せるように意識しました。
――たしかに力強い舞いでした!
タラク:息子のヴァラもタフですが、父親に比べるとおどけていて頼りない感じになっている。その違いをアクションだけでなく演技でも意識しました。二人の戦い方の違いが最もわかるのは、成長したヴァラが戦う場面。デーヴァラは正攻法で力強く戦うのに対して、ヴァラはコバヤシサンが言うようにトリッキーに戦います。
そして、デーヴァラは剣やナイフを使う時は二刀流で戦いますよね。一方のヴァラは……これは詳しく説明してしまうと、まだ観ていない方の楽しみを奪ってしまうのでやめておきますが、注目しておいて欲しいです(笑)。
アクションだけでなくヴァラを演じるときは、彼はデーヴァラのDNAを引き継いでいるので、「実はヴァラも強いのでは?」と観客に思ってもらえるように演じました。映画の中でデーヴァラには「少年時代に海で泳ぐサメを陸に引っ張り上げてきた」という凄い逸話がありますよね。でも、ヴァラは、海で泳いでいるサメの背中にまたがって乗馬のように操ることができるので、実は私自身はヴァラの方が強いんじゃないかな? と思っているんですよ(笑)。

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