REVIEWS丨2024.12.17
悪魔の化身のような“凶悪父ちゃん” 戸愚呂弟のようなマカヴォイはまさに怪気炎 『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』
観るものをどん底まで叩き落とし、「絶望」の二文字を具現化したようなデンマーク映画『胸騒ぎ』が日本でも話題になってはや半年。ハリウッドはホラーの工場とも称されるブラムハウス・プロダクションズによって超速でリメイクされたのが『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』だ。
![スピーク・ノー・イーブル 異常な家族](https://thecage.tokyo/wp-content/uploads/2024/12/snow.jpg)
©2024 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.
旅先で意気投合したイギリス人家族から週末のバカンスに誘われたアメリカ人家族。滞在中にありとあらゆる違和感を感じながらも気まずさや遠慮から「ノー(もう帰る)」と言えない時間を過ごすのだが、徐々にこのイギリス人家族が抱える不気味な秘密が見えてくる。
旅先でベジタリアンだと主張していたにも関わらず肉料理を無理やり食べさせ、ダンスが不得意な自分の息子を教育という建前で過剰に叱りつけ、外食に連れていってくれたかと思えば財布はこちら持ちだったり……。帰ろうとする家族とそれをことごとく阻止する家族の攻防戦はいつ何時、危険な目に遭うかわからないハラハラドキドキの展開で緊張の糸が途切れることはない。
![スピーク・ノー・イーブル 異常な家族](https://thecage.tokyo/wp-content/uploads/2024/12/snow2.jpg)
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『胸騒ぎ』のプロットをかなり忠実に描きながらも後半は大きくホラーエンターテインメントに舵を切っている。そんな中、父親同士の差異がオリジナルよりも精細に描かれているのも非常に興味深い。アメリカ人の父ベンは家庭で微妙な立ち位置に置かれており、大黒柱とは言えないような気弱な性格の持ち主。逆にイギリス人のパディはワイルドな性格であり、文字通り剛腕の持ち主で相対的だ。ベンは憧れの父親像、男性像をパディに見てしまったことで、無力化されてしまうのだ。
本作で悪魔の化身のような凶悪父ちゃんパディを演じるのが名優ジェームズ・マカヴォイである。優しい笑顔から真顔に、そして怒り狂った顔へと表情をコロコロと変える巧妙な演技で観客の心理を揺さぶってくる。正体が判明してから終盤のマカヴォイはまさに怪気炎。ムキムキに鍛え上げられた筋肉で戸愚呂弟のような出立ち(私にはそれくらいに見えた)で暗闇から現れるシーンは目を見張る。
『胸騒ぎ』とはまた違った世界線で描かれる家族の結末を是非、劇場で確かめて。
![スピーク・ノー・イーブル 異常な家族](https://thecage.tokyo/wp-content/uploads/2024/12/snow4.jpg)
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文・ホラー映画取締役
『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』は絶賛公開中