REVIEWS2024.12.26

意外な犯人像… SNSにいる若い女性は全て“奴隷”のターゲット 韓国を震撼させた“史上最悪のデジタル性犯罪”『N番部屋事件』

近年は、様々な形で個人情報の漏洩・流出が巷を騒然とさせるが、そうしたものはなにも誰かの不注意で起きるケースばかりではない。悪意を持った犯罪者に“抜かれる”ケースで起きることも。しかもそうした形で漏洩した個人情報が、さらに深刻な被害を生むこともある。

Netflixで配信されている『Watch サイバー地獄: n番部屋 ネット犯罪を暴く』は、2018〜2020年頃に韓国全土を揺るがすこととなった『N番部屋事件』と、この事件を引き起こした犯人たちを追うドキュメンタリー。この事件は、数名の男たちが、SNS上で見つけた若い女性たちに罠を仕掛けて盗んだ個人情報を元に、彼女たちを脅迫。さらにはネット経由で“奴隷”として遠隔支配することで、彼女たちに淫らな画像や動画などを撮らせては、暗号化アプリ上のネットワークに設けたスペースで、不特定多数の人々に向けて公開し、「視聴料金」として大金をせしめていたという前代未聞のデジタル性犯罪である。この事件は、「悪意の第三者に個人情報を握られる」ということの怖さを、改めて人々に知らしめる形となった。

この作品では、そんなデジタル犯罪を仕掛けた男たちと、それを追い続ける新聞記者やテレビマン、学生たちとの激しい攻防が描かれているが、なんでも、最初にこの事件について報じた新聞記者は、犯人たちによって個人情報を奪われ、拡散されるという被害に見舞われたの。こちらの素性は丸わかりなのに、犯人たちの情報はまるで掴めず…それこそどちらが“追う側”でどちらが“追われる側”なのかさえ曖昧になってくるほどに、“追う側”にとっては厳しい状況となる捜査であった。これもひとえに、ネット犯罪特有の難しさであるといえるだろう。

さて、ここまで大それた事件を引き起こす犯人たちとくれば、当然、その犯人像について、多くの人々が様々な想像を膨らませることだろう。それこそ、スゴ腕のハッカーのような人物像かもしれないし、日本でも話題のSNSマフィアのような集団を思い浮かべる人もいるかもしれない。しかし、実際に逮捕されたのは、このシステムを最初に立ち上げた現役大学生の男や、そこに集い、枝分かれする形で“開業”していた10代の少年などの“普通の子”に見える若者たちだった。“本職”の犯罪者は1人も含まれていなかったのだ。おそらく彼らの家族は、まさか身内にこのような大それた事件を引き起こす者がいたとは、実際に逮捕される日が来るまで夢想だにしなかったことだろう。

デジタル教育、ネットリテラシーに関する指導などにおいては、青少年がデジタル犯罪に「巻き込まれないように」という観点から指導が進められるケースが目立つ。しかし実際には、安易に加害者側に回るようなことがないよう指導することも、もしかすると必要な時代になりつつあるのかもしれない。

『Watch サイバー地獄: n番部屋 ネット犯罪を暴く』はNetflixにて独占配信中

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