REVIEWS2025.02.12

帝王ケンドリック・ラマー、不気味な笑みと共にドレイクとの因縁に決着 スーパーボウル史に残る伝説のステージを披露

ケンドリック・ラマーがニューオーリンズのシーザーズ・スーパードームで行われたスーパーボウルのハーフタイムショーでドレイクとの因縁に決着をつけた。

「Not Like Us」を含む最新アルバム『GNX』の楽曲を披露し、そのパフォーマンスは話題騒然だった。今回のショーで最も注目されていたのは、「Not Like Us」を演奏するのか、そして歌詞のどこまでを披露するのかという点だった。結果として、ケンドリックはこの曲を演奏。ただし、「pedophile(小児性愛者)」のワードは省略しつつも、ドレイクへの痛烈なメッセージを込めた。

Kendrick Lamar

Kendrick Lamar performs during halftime of the NFL Super Bowl 59 football game between the Kansas City Chiefs and the Philadelphia Eagles, Sunday, Feb. 9, 2025, in New Orleans. (AP Photo/Matt Slocum)

このパフォーマンスは、ケンドリックが「今を生きることが大事」と語った通り、過去のヒット曲ではなく『GNX』の楽曲を中心に構成。セット中盤にはSZAが登場し、「luther」や「All the Stars」を共に披露。それでもこのショーはケンドリックのための舞台であり、巧妙な演出、ストーリーテリング、そして圧倒的なラップスキルが光るものだった。

ショーのオープニングは未発表曲「Bodies」。『GNX』発表時のトレーラーで少し流れていたこの曲だが、今回のステージで本格的に披露された。その後の演出も一貫して「物語」を感じさせるもので、俳優のサミュエル・L・ジャクソンがナレーションを務め、ケンドリック自身もカメラに向かって語りかけながら、アメリカ、ヒップホップについて語った。

また、このステージではアメリカの愛国心を皮肉るような演出も見られた。ダンサーたちは赤・青・白の衣装を身にまとい、ジャクソンは「これは偉大なアメリカのゲームだ」と語る。観客の中にはスーダンとパレスチナの旗を掲げた者もいたが、すぐに警備に制止された。

ショーの終盤には待望の「Not Like Us」。ケンドリックは楽しそうに笑みを浮かべながら、観客と共にドレイクへの皮肉を歌い上げた。「Say Drake, I hear you like them young」のラインでは、まるでホラー映画のキャラクターのような不気味な笑みを浮かべ、観客は大歓声で応えた。

また、カメラワークのレベルも非常に高く、まるでミュージックビデオのような映像美を実現。近年のスーパーボウルハーフタイムショーは映像技術が向上しており、昨年のアッシャーのローラースケートパフォーマンスや、一昨年のリアーナの大胆なクローズアップショットと並ぶ完成度だった。

ケンドリック・ラマーのパフォーマンスは、スーパーボウル史に残るショーとなった。ドレイクとの確執への決着、演出へのこだわり、そして圧倒的なラップスキル。どの視点から見ても、このステージは伝説級のものだった。