REVIEWS丨2025.02.21
SNSの残酷ショーで人殺し、真実はフェイクニュースに… 騙されているのは観客? ラストに大きな疑問を残す衝撃作『コメント部隊』
韓国映画『コメント部隊』は、実力派俳優ソン・ソックが主演を務める社会派サスペンス。「私の解放日誌」の寡黙な男・ク氏や「犯罪都市 THE ROUNDUP」の狂気じみた誘拐犯カン・ヘサンを演じたソックが、社会派の記者役を好演している。
ソック演じる記者イム・サンジンは、大手財閥「マンジン・グループ」の不正を暴く熱血記者。しかし、財閥側は巧妙に世論を操作し、より刺激的なニュースやネット上の噂を拡散して彼の記事を埋もれさせる。さらに、彼の報道は「フェイクニュース」とされ大炎上、職場から6か月の自宅待機処分を受けてしまう。そんな彼の前に、一人の若者が現れる。彼は「コメント部隊」の存在を暴露し、イムの記事を意図的に貶めたのは彼らの仕業だと告白。さらに、彼自身がコメント部隊であり、友人二人と共に世論操作を行ってきたことを打ち明ける。そして物語は想像を超える思わぬ方向へ転がっていく。
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©2024 ACEMAKER MOVIEWORKS & KC VENTURES & CINEMATIC MOMENT All Rights Reserved.
誹謗中傷による残酷ショーで人を殺し、必要とあらば、真実さえも「フェイクニュース」にされてしまうソーシャルメディア全盛の今、このテーマは非常にタイムリーであり、本作をよりリアルに感じさせるスリラーへと仕立て上げている。メディアは、一部の権力者や巨大企業によってコントロールされ、大衆の意見を操作している。陰謀論のように聞こえるが、世界中で同じようなことが起きているかもしれないと思うと、映画がより現実味を帯びてくる。
映画が進むにつれ、観客はどこまでがリアルでどこからがフェイクなのか?次第に混乱させられることになるだろう。真実と嘘の境界線が曖昧なこの物語では、騙されているのは記者だけではなく、観客自身だ。
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主演のソン・ソックだけでなく、キム・ソンチョル、ホン・ギョン、キム・ドンフィといったコメント部隊を演じる若手俳優の好演が光る。彼らが演じるネット工作チームは、ネット民のリアルさと残酷さを見せる。そして、ストーリーの緊張感が高まるにつれ、関係性が変化していき、そのコントラストが映画のクライマックスをより際立たせている。
この映画は最後まで核心となる問いに明確な答えを出さない。この結末こそが、真実を掴むことの難しさを象徴していると言える。フェイクかリアルかを決めるのは観客自身。そうした問いを投げかける点で、本作は現代社会のリアリティを鋭く突いた作品と言えるだろう。
原作は2015年に発表された元新聞記者による同名小説だが、この話は本当にフィクションなのか?この映画が完全に作り話だと言い切るのも難しいし、逆に事実だと断言することもできない。映画を観終わった後、観客には大きな疑問を残すだろう。『コメント部隊』は、フェイクとリアルの境界を描きつつ、エンタメ性と社会批判を兼ね備えた、まさに今の時代にふさわしい衝撃作だ。
『コメント部隊』は大ヒット上映中