REVIEWS丨2025.04.11
正義とは何か、悪とは何か? ネオンが輝く華やかな夜の街並みと裏路地に広がる陰鬱な世界… 視聴者に深い余韻を残す『江南Bサイド』

© 2025 Disney and its related entities
Disney+(ディズニープラス)の韓国ドラマ『江南Bサイド』は江南で失踪した“クラブのエース”を捜索する刑事と検事、そして、江南を牛耳るミステリアスな雰囲気漂う謎の男が、江南の闇に隠れた事件を追うノンストップ・サスペンス。
華やかなイメージのある江南(カンナム)の裏側に潜む闇を暴き、システム的な腐敗や人間の悲劇を描く作品だ。ナイトクラブが立ち並ぶこの街は、美しく裕福な人々が集まる場所として知られているが、本作はそのイメージを一変させる。ネオンが輝く華やかな夜の街並みと、裏路地に広がる陰鬱な世界のコントラストが、作品のテーマを象徴している。
主人公のカン・ドンウ(チョ・ウジン)は正義感の強い刑事。警察内部の汚職を暴露したことで、辺境の地に左遷されるが、クラブで働く若い女性たちの失踪事件をきっかけに再び江南の闇社会に戻ってくる。彼の前に現れるのは、ユン・ギルホ(チ・チャンウク)。彼はクラブの女たちを管理するディーラーでありながら、彼女たちを守ることに執着する男。善と悪の境界が曖昧な存在として描かれる。物語の鍵を握るのは、クラブで働くキム・ジェヒ(BIBI)。彼女は危険な犯罪組織に関する証拠を持っており、多くの勢力から狙われる。物語は彼女を巡る緊迫した追跡劇へと発展し、登場人物たちの思惑が絡み合う。
チョ・ウジンは、職務と個人の正義の間で揺れる刑事の葛藤を見事に表現。チ・チャンウクは、カリスマ性と哀愁を兼ね備えたギルホというキャラクターに奥行きを与えている。BIBIは、ジェヒの脆さと強さを同時に演じ、単なる被害者ではなく、生き抜こうとする女性のリアルな姿を見せる。
『江南Bサイド』の特徴は、単なる善悪の対立ではなく、法執行機関、犯罪組織、そして搾取の連鎖に囚われた人々が複雑に絡み合う社会構造を描いている点だ。警察組織の腐敗は当然のように存在し、主人公のドンウでさえシステムの外に立たされている。視聴者は、正義とは何か、悪とは何かを考えさせられる。
また、ドンウの個人的な事情も物語に深みを与える。彼の娘イェソは、過去にクラブで働く女性たちとの出来事を経験し、それが精神的なトラウマとなっている。ドンウにとって、この事件は単なる捜査ではなく、家族の問題とも密接に関わってくる。一方で、ギルホというキャラクターの描かれ方も印象的だ。彼はピンプでありながら、彼が管理する女性たちを本気で守ろうとする。しかし、その行動は彼らを搾取することと紙一重であり、視聴者に道徳的な問いを突きつける。
『江南Bサイド』は、単なる犯罪ドラマではない。社会の不条理、権力の腐敗、そして生き抜くための妥協と決断を描く。物語が進むにつれ、登場人物たちは善と悪の境界を超え、それぞれの正義と生存戦略を模索していく。江南の煌びやかな表舞台の裏に隠された影。それを暴く『江南Bサイド』は、視聴者に深い余韻を残すだろう。

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