MOVIE2025.12.28

「なぜ描くのか」「なぜ走るのか」 劇場アニメ『ルックバック』Blu-ray&DVD発売記念 押山清高監督×岩井澤健治監督トークショー

劇場アニメ『ルックバック』Blu-ray&DVD発売記念上映イベントが開催された。本イベントには、本作の監督を務めた押山清高監督と、押山監督とも親交があり、話題作『ひゃくえむ。』(2025年公開)の監督を務めた岩井澤健治監督がゲストとして登壇。公開時に大きな反響を呼んだ両作品を手がけた二人が、「なぜ描くのか」「なぜ走るのか」という“生き方”をテーマに語り合う、初のトークショーが実現した。

ルックバック

『ルックバック』公開時以来、久しぶりとなる舞台挨拶について感想を求められた押山監督は、「とても思い出深い劇場です。公開から2年近く経った今も、こうして足を運んでくださる方がいることが本当にありがたいです」と、観客への感謝を述べた。続いて『ルックバック』の感想を問われた岩井澤監督は、『ひゃくえむ。』制作中に本作を鑑賞したことを明かし、「作品の方向性にすごく迷っていた時期に観て、『ひゃくえむ。』は『ルックバック』のような仕上がりにしたいとスタジオのスタッフに話しました。とても勇気づけられた作品です」と語った。

これを受け、押山監督は「スタジオ見学に行きたいとご連絡をいただいて、実際にスタジオドリアンでお話しする機会がありました」と当時を振り返り、岩井澤監督も「押山監督の話を聞いて、自分がやろうとしていることは間違っていないんだと背中を押してもらえました」と続けた。『ひゃくえむ。』についての感想を聞かれた押山監督は、「100メートルという距離の中に人生がぎゅっと詰め込んだような感じ。セリフまわしも非常に巧みで、それぞれの生き様、どう生きていくかに結びついていく感じがあってすごくうまいなと思いました」と称賛。さらに、「ロトスコープで作られているというのもあるのですが、3分ほどの恐ろしいカットがあるじゃないですか。あれを前にすると、『ルックバック』で自分がやったことは大したことなかったなと思いました」と笑いを交えて語った。

ルックバック

© 藤本タツキ/集英社 © 2024「ルックバック」製作委員会

そんな二人の出会いは、2019年の新千歳空港国際アニメーション映画祭がきっかけだったという。押山監督が『シシガリ』、岩井澤監督が『音楽』という作品をそれぞれ出品しており、当時は簡単な挨拶程度だったものの、岩井澤監督は「『シシガリ』が本当に素晴らしくて。押山さんが『ルックバック』をやると聞いたとき、もう間違いないと思いました」と語った。『ルックバック』が描く「なぜ描くのか」、そして『ひゃくえむ。』が問いかける「なぜ走るのか」。勝ち負けや才能といった単純な価値観ではなく、「どう生きたいか」「どう在りたいか」という共通のテーマについて、制作当時に意識していたことを問われた両監督。
岩井澤監督は、「特に『ひゃくえむ。』は、小学生や10代など、できるだけ若い世代に観てほしいと思って作りました。陸上がテーマの作品ですが、走ることに限らず、何かを目指すきっかけや、背中を少し押すような存在になれたら」と作品に込めた思いを語った。一方、押山監督は「『ルックバック』は、ある意味で自分の背中で語らなければいけない作品でした。映像化が決まった時点で覚悟を決め、少しでもそのテーマに向き合い、目指す場所に近づけるように作らなければならないと感じていました」と、制作当時の心境を振り返った。さらに、「創作を続ける理由」について問われると、岩井澤監督は「時間をかけること自体が苦ではない。『音楽』は7年かかりましたが、むしろ早くできたと感じるくらいです」と語り、押山監督は「絵を描くこと自体が楽しい瞬間は、仕事じゃないとき。展覧会用のイラストを描いていて、だんだん良くなっていく瞬間だけは本当に楽しい」と、創作の喜びを語った。

最後に、岩井澤監督は「『ひゃくえむ。』は12月31日からNetflixで配信も始まります。まだ劇場でも上映しているので、ぜひ足を運んでください」とPR。また、「ルックバック」Blu-ray&DVDの見どころについて、押山監督は「線撮などのメイキングを映像化したもの、海外上映用に撮った僕や河合優実さん、吉田美月喜さんのインタビューも収録されているなど、ファンの方に楽しんでいただける内容になっています」とアピール。特典内容に興味津々な様子で「オーディオコメンタリーも入っているんですよね?」と問いかける岩井澤監督とのやり取りに、会場は和やかな空気に包まれた。

ルックバック

© 藤本タツキ/集英社 © 2024「ルックバック」製作委員会

『ルックバック』は、2026年1月16日(金)より全国23館でリバイバル上映が決定
藤本タツキの短編アニメ集『藤本タツキ 17-26』は、2026年1月16日から全国45館で順次再上映

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