REVIEWS2025.04.10

血しぶきや拳の重さが伝わってくる 暴力と美しさが共存した壮絶な復讐アクション『モンキーマン』

モンキーマン

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『モンキーマン』は、「ゲット・アウト」などのジョーダン・ピールのプロデュースのもと、「スラムドッグ$ミリオネア」のデヴ・パテルが主演・監督・脚本すべてを手がけたリベンジアクションだ。舞台はインドのとある都市。猿のマスク姿で闇のファイトクラブに立つ“殴られ屋”の青年KIDが、復讐の化身〈モンキーマン〉となり、かつて自分の母親を殺害し、全てを奪った者たちとの壮絶な戦いに身を投じる。

物語の序盤、KIDが武器商人に「ジョン・ウィックは好きか?」と聞かれるシーンがある。これは明らかに本作がジョン・ウィックをはじめとするアクション映画から影響を受けていることを示す重要な場面だ。『モンキー・マン』は実際に「ジョン・ウィック」シリーズとの比較をされていたが、ただの模倣ではなく、独自のスタイルを持っている。

アクション映画としてクリエイティブに優れており、バトルシーンはどれも息を呑むほど激しく、しかもリアルだ。KIDは武器を持たず、イスや瓶など周囲のモノを即興で武器に変えて戦うのも面白い。カメラワークも素晴らしく、暴力的なアクションがしっかり映える撮り方がされており、血しぶきや拳の重さが伝わってくる。それは、ある種の美しさすら感じさせる。特にエレベーター内でのナイフによる接近戦や、クライマックスのナイトクラブの階を一つ一つ攻略していくアクションはとくに圧巻だ。「燃えよドラゴン」や「ザ・レイド」、韓国のアクションスリラー作品などを観て研究してきたパテルは、この作品で一気に爆発させた。

物語は母親の死の真相を追いながら、主人公が権力の中枢に迫っていくという王道の復讐譚だが、インドの神話(猿神ハヌマーン)や社会腐敗や権力構造に対する批判が織り込まれており、単なるアクション映画には終わっていない。暴力の意味やその背景にも目が向けられている。トランスジェンダーなどのマイノリティがどうやって圧力の中で生き抜いていくかというテーマも丁寧に描かれている。

スタイリッシュで、エネルギッシュ。強い意志と映像表現の工夫に満ちており、激しい暴力描写が作品のテーマとリンクしている。『モンキーマン』は一味違うリベンジアクション映画となっている。

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