REVIEWS丨2025.07.05
人間とは…? 衝撃のラストを迎えた『イカゲーム』シーズン3、視聴者の心を揺さぶったトラウマシーン

Netflixシリーズ『イカゲーム』シーズン3
※この記事には『イカゲーム』シーズン3最終話の重大なネタバレが含まれています。
大ヒット韓国ドラマ『イカゲーム』最終シーズンとなるシーズン3が、6月27日(金)よりNetflixにて世界独占配信中だ。シーズン3はシリーズの集大成として強烈な印象を残す。これまで以上に主要キャラクターが死亡し、衝撃的な展開が次々と描かれ、数えきれないほどの感情的な場面が詰め込まれていた。その中でも特に視聴者の心を揺さぶった5つの瞬間をピックアップ。
・ヒョンジュの死
ヒョンジュの死は完全に不意打ちだった。自己中心的な行動が支配するゲームの中で、彼女は他のプレイヤーを守り抜き、ついには出口を見つける。しかし、自分だけ逃げることができず、仲間の無事を願って戻った結果、ミョンギに殺される。彼は金のため、そしてジュニの命令にも応えての行動だった。
ヒョンジュは生き延びるチャンスを持っていたのに、それを捨てて仲間のために戻った。その利他的な選択が命を落とす結果になったことが、あまりにもやりきれなかった。彼女の死を見届けたクムジャの涙と、目を閉じさせる仕草が、静かに深い喪失感を刻みつける。
・クムジャの自死
クムジャの死は、予想すらできなかった形で訪れた。彼女はゲーム内でも特に純粋な存在だったが、自らの手で息子を殺してしまった罪悪感にずっと苦しんでいた。そして、人々が変わらないことにも絶望していた。
特に「かくれんぼ」のような凄惨なゲームの後でも、人々はゲームを続ける選択をする。そんな現実に耐えられなくなった彼女は、誰にも告げずに静かにこの世を去る。その衝撃と虚しさに、視聴者も主人公ギフンも言葉を失った。あの夜の光景は、シリーズの中でも屈指の痛みを伴う瞬間だった。

Netflixシリーズ『イカゲーム』シーズン3
・赤ん坊を橋の上から落とそうとするミョンギ
血に染まった顔で絶叫し、我が子を橋の端から突き落とそうとするミョンギの姿は、人間の邪悪さの極限を描いていた。
金のためなら子供すら犠牲にする。その残酷さと同時に、彼の死の瞬間にもある種のカタルシスがあった。服の糸が一本ずつ切れ落ちていくなかで見せたミョンギの恐怖と絶望は、彼がただの“悪”ではなく、破綻してしまった人間であったことを物語っていた。
・ジュニの決断
ジュニはシリーズ通して最も穏やかな存在だった。出産を終え、足を負傷しながらもゲームを続けていたが、最終的に大縄跳びで限界を迎える。
ギフンに赤ん坊を託し、「あなたが死ねば、赤ちゃんも終わり」と告げ、自ら命を絶つ選択をする。彼女の目に浮かんだ涙と、スローモーションで描かれた落下シーンはあまりにも美しく、そして哀しかった。花模様の地面に横たわる彼女の姿は、命の終わりと希望の継承を同時に象徴していた。
・ギフンの死
『イカゲーム』全シリーズで最も強烈なシーンは、やはり主人公ギフンの死だろう。彼は最後まで戦い続け、他人のために自分を犠牲にするという選択を取る。赤ん坊を抱きながら、監視しているフロントマンとVIPたちをにらみつけるその表情には、怒りも諦めも込められていた。
「俺たちは馬じゃない、人間だ。そして人間とは——」
このセリフで締められるギフンの最後の言葉は、あえて“人間とは何か”を定義せず、観ている側に問いを投げかける形になっていた。人間は社会の鏡であり、変化は集団の意志でしか起こせないというメッセージが込められていた。
カメラ目線でギフンが語りかける演出も、視聴者に「これはお前の物語でもある」と突きつけてくるようで、静かに胸を打つ。そして「プレイヤー456、脱落」のアナウンスで物語が終わる。シリーズそのものの終わりにふさわしい、最も重く、強烈な幕引きだった。シーズン3は全体を通して、善と悪の境界線が曖昧な世界のなかで、それでもなお人間であろうとする人々の姿を描いていた。犠牲と絶望が積み重なるなか、わずかな希望や信念が確かに存在した。

Netflixシリーズ『イカゲーム』シーズン3