REVIEWS丨2025.02.15
過激な暴力描写が大爆増! 過去最高レベルにダーク 『デアデビル:ボーン・アゲイン』完全解説 「キャプテン・アメリカBNW」ともリンク?
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©︎2025 Marvel
3月5日(水)よりディズニープラスで配信されるマーベルの新ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』の予告編がリリースされ、世界中のマーベル・ファンを熱狂させています。マーベル好きにとってこの作品は待ちに待った作品。僕も2020年のサンディエゴ・コミコンのマーベル・シネマティック・ユニバース/MCUのパネルに参加した際、このことが大きく発表されるやいなや会場が大いに沸いたことを記憶しています。あれから4年、ついにデアデビルがやってくる!
デアデビルとはいかなるヒーローなのか?その歴史を簡単に振り返りましょう。
デアデビルはマーベルのヒーロー。コミックのデビューは1964年。昼は弁護士のマット・マードックが、法律では解決できない悪を倒すため夜はデアデビルというヒーローになって犯罪者と戦います。デビルの名の通り悪魔を模したコスチュームを着ています。またデアデビルには命知らずという意味もあり、文字通り命を懸けて悪人たちと戦います。このヒーローの特徴はマット・マードックが盲目ということです。
マーベルで数々のキャラを生み出したスタン・リーは、ハンディキャップを持つ人間をヒーローにしたかったそうです。盲目のきっかけは子どもの頃、目に放射性物質を浴びたせいですが、その副作用で視覚以外の感覚が超人並みになり、特に音で周りの状況を把握するレーダーセンスを身に付けます。そして格闘術を身に付け敵に挑みます。彼が戦うのは宇宙人やロボットというSF的なヴィランではありません。ニューヨークの人々を犯罪から守るために立ち上がるのです。なのでこのヒーローは“マーベルのバットマン”と言われることもあります。
コミックにおいてデアデビルがブレイクするきっかけになったのは1980年からのシリーズ。後に『バットマン:ダークナイト・リターンズ』『300』『シン・シティ』を発表するフランク・ミラーが担当しました。よりアダルトでシリアスなストーリー展開が人気を博したのです。このデアデビルは過去3回実写化されています。
1、90年に、TVドラマ版『超人ハルク』の延長路線でパイロット版が製作(日本では『超人ハルク 敵か? 味方か? テアデビル』というタイトルでDVDリリース。なぜか誤植で“デ”ではなく‟テ“アビルになっています)
2、2003年に20世紀フォックスでベン・アフレック出演で映画化。恋人にしてアサシンのエレクトラを演じたのジェニファー・ガーナ―(後に『エレクトラ』単体のスピンオフも作られる)『デッドプール&ウルヴァリン』に登場したジェニファー・ガーナ―のエレクトラおよびデアデビルについてのネタはこの20世紀フォックス版に由来。
3、2015年ドラマ・シリーズ版が製作、ネットフリックスで配信。マット・マードックをチャーリー・コックスが演じ、彼が戦うNYの犯罪界のボス、ウィルソン・フィスク / キングピン役にヴィンセント・ドノフリオが起用されています。
ここで注目すべきは3。これはデアデビルの映像化権が20世紀フォックスからマーベル本体に戻り(ただし、これは後のディズニー/マーベルの20世紀フォックス買収とは無関係の動き)、マーベルは晴れてデアデビルの実写化に着手できるようになります。2015年はすでに映画界ではMCUが始まっていますが、やはりデアデビルは犯罪アクションモノなのでイベント的な映画よりもじっくりストーリーで魅せるドラマ・シリーズの方が似合う。なのでマーベルはデアデビルを映画ではなくドラマ企画として立ち上げます。
ところが、ディズニープラスはまだ立ち上がっていません。なので配信先はネットフリックスとなりました。しかし、諸般の事情で映画のMCUを展開するチームとこのネットフリックス版を手掛けるチームは別であり、このデアデビルは一応MCUの世界観とつながっていますが、映画とのクロスオーバーはほとんどなく独自路線となりました。それ故、かなりバイオレンスでシリアスなトーンのドラマとなります。そうこうしているうちにディズニープラスの立ち上げが決まり、マーベルのドラマの発表先はこのプラットフォームに集約されることになりました。
さらにここで配信するマーベルのドラマは映画と同じ部門が作ることとなり、より映画と連動したものにしていくことが決定。(その第一弾が2021年の『ワンダヴィジョン』です)この方針転換にともないネットフリックス版デアデビルは2018年のシーズン3をもって終了します。ネットフリックスのシリーズは評価も高かったので、多くのファンが、このデアデビルの打ち切りにショックを受けます。しかし、マーベル側はネットフリックスのデアデビルシリーズが支持を得ていることを十分に認め、チャーリー・コックス演じるマット・マードックを映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』、ドラマ『『シーハルク:ザ・アトーニー』『エコー』に登場させ(後者の2つのドラマ版には変身姿の“デアデビル”としても登場)、ヴィンセント・ドノフリオ演じるウィルソン・フィスク / キングピンをドラマ『ホークアイ』『エコー』に出演させました。
つまり、これによりチャーリー・コックス版マット・マードックがこれからのMCUに登場することが約束されました。さらに嬉しいのは新ドラマ・シリーズ『デアデビル・ボーン・アゲイン』が製作されることが発表されたわけです。(これが冒頭に書いたサンディエゴ・コミコンでの発表です)。そうなるとファンの心配は今までの設定を一新した新シリーズなのか?あのシリアス路線の『デアデビル』シリーズを継ぐもの=事実上のシーズン4なのか?ファンとしてはのシーズン4であってほしい。そして今回の予告を視る限り、後者だったようです。
この予告編はバイオレンスとテンション、そしてマードックとフィスクのヒリヒリするような会話など、これぞ『デアデビル』なトーン&マナーです!そしてこの予告で僕が注目したのは4人のキャラです。
・白いマスクの男が2人
この予告にはよくみると白いマスクを被ったキャラが2人出てきます。一人は目から血が流れているようなマスクを被った人物。ちょっとジョーカーっぽい。これはコミックに登場するミューズという殺人鬼。被害者の血を使って絵/ストリートアートを描くというとんでもないやつ。恐らくミューズが今回デアデビルが立ち向かう敵の一人でしょう。そしてもう一人プロレスラーのような白いマスクを被る人物が出てきます。これはコミックに登場するホワイトタイガーという別のヒーロー。その正体はヘクター・アヤラ。ラテン系のヒーローです。(コミックでは彼の妹エヴァもまたホワイトタイガーを襲名します)なのでデアデビルはタホワイトタイガーとタッグを組んでミューズを追う?
・パニッシャーとブルズアイ
予告編の中でマードックと取っ組み合いになる人物。マードックは彼を「フランク」と呼びます。彼はフランク・キャッスル。マーベルの誇るダーク・ヒーローにして必殺処刑人のパニッシャーです!(演じるのはネットフリックス版でもこの役を演じたジョン・バーンサル)ということはパニッシャーのドラマも作られるかな?
またちらっとですが、歩いている囚人がクローズアップされます。これはシーズン3に登場したウィルソン・ベセル(演じるのはベンジャミン・ポインデクスター)。別名ブルズアイ。前シーズン3ではフィスクに背骨をくだかれました。しかし復帰、歩いている。コミックだと彼の脊柱にアダマンチウム(!)が移植され復活するのです!アダマンチウムとはウルヴァリンに移植されたあの超合金です。そして映画『キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド』でもこのアダマンチウムの存在が重要な役割を果たすといわれています。つまり2月14日公開の映画『キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド』ともリンクしている?
いかだったでしょうか?なおデアデビルのコスチュームの色は何度か変わっており、コミックでは最初は黄色、のちに赤です。この予告編の中で様々なデアデビルのヘルメットが並んでいるシーンがあり、いろんなバージョンのデアデビルが登場するかも!これも楽しみです。
マーベル好きにとって2月14日に映画館で『キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド』、3月5日に配信で『デアデビル・ボーン・アゲイン』と最高のイベントが続くのです!
文・杉山すぴ豊