REVIEWS2025.04.05

よくある“クールな強盗映画”の真逆を行く… 容赦なく“狩られる”恐怖と絶望のみ Netflix『狩りの時間』

Netflix『狩りの時間』は、ハードなクライム映画と緊張感あふれるディストピア・スリラーが融合した作品だ。

物語の舞台は、経済が崩壊し、生き抜くためには金がすべてという近未来。そんな世界で、ジュンソク(イ・ジェフン)と仲間たちは、一発逆転を狙い、賭博場を襲撃する。しかし、計画は順調に進むどころか、彼らはある恐ろしい男の標的になってしまう。暗殺者ハン(パク・ヘス)は、ただの殺し屋ではない。生きるための選択肢をひとつずつ潰していくかのように彼は獲物をじわじわと追い詰め、逃げ場を奪っていく。

多くの強盗映画では、犯罪がクールに描かれる。緻密な計画、巧妙な変装、そして派手なカーチェイス。だが、『狩りの時間』はその真逆をいく。計画の甘さ、経験不足、そして純粋な絶望だけが、彼らを突き動かしている。しかし、強盗の成功が自由への切符になるどころか、彼らは死のゲームに巻き込まれることになる。この映画の最大の魅力は、緊張感の作り方だ。派手な爆発やスローモーションのアクションシーンではなく、静寂の中で忍び寄る恐怖。観客は、キャラクターと同じように息をひそめ、次の瞬間に何が起こるかわからない不安に苛まれる。そして、いざアクションが始まれば、その展開は容赦なく、逃げ場のない恐怖へと叩き込まれる。

そして、何よりも強烈なのは、暗殺者・ハンという存在だ。映画「ノーカントリー」に登場する殺し屋にしてシリアルキラー、アントン・シガーに匹敵する不気味さだ。彼には長々しいモノローグも、過去の悲劇もない。ただ淡々と、無慈悲に仕事をこなす。まるで死神のように、彼の視界に入った者は決して逃れられない。ジュンソクたちがようやく逃げ切ったかに思えたその瞬間、ハンはまるで悪夢の中の影のように再び現れる。彼には交渉の余地もなければ、妥協もない。『狩りの時間』のタイトル通り、これはハント(狩り)であり、ハンこそが容赦なきハンターなのだ。

『狩りの時間』はNetflixで配信中

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