REVIEWS丨2024.12.04
「世界で最も嫌われた男」炎上系迷惑系ユーチューバーからボクサーに転身した“問題児”ジェイク・ポールはただのクソ野郎か?
Netflixにて配信中のジェイク・ポールのドキュメンタリー『Watch Untold: ジェイク・ポール、嵐を呼ぶ問題児』は、YouTuberからの転身でなぜか“悪役ボクサー”として大ブレイクするに至ったジェイクの、その稀有な足跡を辿る作品だ。
もともと兄のローガンとともに小学生の頃からYouTube動画の制作と投稿を行っていたというジェイクは、ショート動画アプリ・Vineで注目を集めると、瞬く間に人気配信者となり、10代後半には既に“超”のつく人気のインフルエンサーとなった。ここまでのジェイクはまさに時代の寵児。もとは一介の名もなき兄弟であった彼らが、動画投稿ブームの波に乗ったことでアイドル的な人気を獲得し、瞬く間にハリウッドスター顔負けの億万長者となった。が、この慣れない栄華は、徐々にジェイクと、兄・ローガンの感覚を狂わせていく。人気者になったがゆえのある種の慢心と、絶えずその人気を維持せんとする強迫観念にも似た想いからなのか、彼らの動画の内容は急速に過激化。もはや“ラリって”しまったとしか言いようのないような、『ジャッカス』シリーズをさらに悪質にしたかのような“たちの悪い笑えない悪ふざけ動画”を乱発し、炎上騒ぎをしばしば引き起こすようになる。
やがて元・人気YouTuberのジェイクは、兄・ローガンとともに、いつしかYouTube抜きにして、単なる“ネット上のクソ野郎”として扱われるようになっていったが、迷走を続けながら転落していくなかで、ジェイクとローガンはYouTuber同士のボクシングバトルに参戦、思わぬ転機を迎えることとなる。当初、メインは兄のローガンであったが、その試合の前座でボクシングのデビュー戦に挑んだジェイクは、5回TKO勝ちという思わぬ健闘を見せる。結論からいえば、この勝利が彼らの運命を大きく変えた。
その後、ボクサーとしての修行を積んだジェイクは、ローガンに支えられながらプロデビュー。以後、強力な対戦相手に勝ち続けることで、ファイトマネーが加速度的にどんどん膨れ上がり、先頃行われた“ボクシング界のレジェンド”マイク・タイソンとの一戦では、タイソンとジェイクに合計8000万ドル(約120億円)もの大金が振舞われることとなった(試合はジェイクが勝利)。
この『Watch Untold: ジェイク・ポール、嵐を呼ぶ問題児』は、観ていて少々興味深いのは、ジェイクが迷惑系YouTuberからボクサーへと転身を果たした現在も、多くの人々から「クソ野郎」呼ばわりされている一方で、若い層を中心に、彼を熱烈に支持する人々が数多くいるという点だ。しかも彼を「クソ野郎」呼ばわりしている層でさえも、厳密にいえば、彼の悪役ぶりに魅了されている部分が少なからずあり、結局のところ彼は、「愛すべきクソ野郎」的な存在であることが窺えるのだ。どんなに叩かれ、どんなに罵倒されていても、本質的には憎まれておらず、愛されるクソ野郎…彼はそんな“ヒールの真髄”ともいえる稀有な人生を送れているのかもしれない。
『Watch Untold: ジェイク・ポール、嵐を呼ぶ問題児』はNetflixにて独占配信中